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来る日も来る日も

好きなことを好きと言ってみたくなった。

フットボールアワー・後藤輝基という人

声が大きくて、たまに無神経なことを言う、よくテレビに出ている人。世間の後藤さんへのイメージはそんなもんじゃないだろうか。

かく言う私もそう思っていた。そして、そう考えていたら、間違いはないと思う。

 

けれど、私はこのイメージに、疑問をもってしまった。これから、その疑問の内容について説明するが、一つ覚えていてほしいのは、この文章のすべては、私の推測であって、世間のイメージが、圧倒的に正しいということだ。

芸能人がテレビを通じて私たちに与えるイメージこそが、すべてで、こんな素人の邪推は、読み飛ばしていただいて構わない。これは、ただの私の備忘録です。

 

さて、前置きはこれくらいにしておいて、さっさと本題に入ろうと思う。

 

まず、私が後藤さんに興味をもったきっかけについて、お話ししたい。

 

それは、ざっくりハイボール(新・ざっくりハイタッチ)*1という番組の「おしゃべり割烹小藪亭」というコーナーでのことだった。

小藪 後藤もでも、呑んだら、「お笑い理論」…

後藤 いやぁ、お笑い理論というのはないですけど、どっちかいうたら、もうね、反省するタイプなんです。だからこう、もう、家帰っても、もう1人で酒呑んで「ちっ、あぁ〜〜……」ってなるんすよ。で、溜まってる、ハードディスクの、自分でてるやつとか、見て、「うわ、もう最悪や」みたいな。もう、ずっと言うてますね。「うわうわうわ。もうあかんあかん」ほなもう、酒呑んでるから余計、ドキドキしてきて。「うわ……」ってまた立って、

千原 わかるわ〜…

後藤 で、ちょっと巻き戻して、「うわあかんあかんあかん」なんかそんなんやってるんすよ。

小藪 だってもう、ちゃんとした目見たことないというか。もうちょっと仕事増えてから、おれ後藤とパッと会うたら、もう、なんて言うんですか、昔の目じゃないというか。誰と喋るにも、もう、タレントの目を入れ込んで。

後藤 えぇ??

小藪 本心で、喋ってること一回もないと思いますよ

後藤 いや、そんなことないですよ。

小藪 それはだから、嘘ついてるとかじゃないよ。すべて、いつ何時も、タレントモード、芸人モードでおるから。見ててもう、なんかアンドロイドになったというか。

後藤 (笑)

小藪 おれは寂しさ感じてたよ。

後藤 いやいやいや、感情的ですよ!

小藪 いや、お前が、ガチで一回、一回もわろてへんと思う、東京きてから

千原 そうなんかお前。

小藪 ツッコミサイボーグや、お前みたいなやつわ!

後藤(笑)

千原 あーあ。

後藤 そんなこと、機械的にやってませんよ、感情的に常にやってますよ。

(中略)

小藪 後藤もサイボーグな感じでジュニアさんにツッコんだり、で、僕が言うたことに「カッカー」わろてるけど、全然目がわろてない。

 

この後藤さんと小藪さんのやりとりが、妙に胸につっかえたのだ。ジャニオタ考察厨の血が騒いだと言ってもいい。

確かに、後藤さんには死んだ魚の目を一本にして笑っていることが多い気がする。若い子に「私に興味がない」なんて冷たい司会者扱いされたこともある。

そんなネタのような話にもし、1%だけでも事実がブレンドされていたとしたら?

 

小藪さんと後藤さんの関係は知らないが、「東京きてから」「ちょっと仕事増えてから」「ちゃんとした目を見たことない」ということは、裏を返せば「東京にでてくる前はちゃんとした目をしていた」ということになる。その「ちゃんとした目」というのをしている後藤さんは、どんな人だったんだろう。私の知っている、あの目とは違ったんだろうか。

 

後藤さんの、わざとらしいまでのこってこての関西人というキャラクター(私の勝手なイメージ)は、「東京」に来てから作られたものなのだろうか。それとも、小藪さんの言う「タレントの目」はそういうものとはまた違った、何かなのだろうか。だとしたら、その「何か」ってなんだろう。

 

こんな微妙な疑問が私の中にしこりのように残った。

 

 

そして、この疑問は、案外早く解決できた。私の中では、ラジオ・「中川家のネコ電」*2フットボールアワーとしてゲストに呼ばれた回を聞いたことで処理することができた。

 

中川家 後藤な、別に一人でおっても、弾いてんのやろ?ギター。友達おるやんか、ギターの。

後藤 いや、僕、めっちゃ暗いヤツですやんか。

中川家 いやだって、もともと暗かったやんか。エレキグラム*3のときには、暗かったやんか。

後藤 いや僕正直に言いますけど、岩尾に負けへんほど暗いですから。

岩尾 ほんま、ほんまに暗いですからね。

 

これだ。こういうことか。

 

今、フット後藤と聞いて、「暗い芸人」と思う一般視聴者はそんなにいないだろう。むしろ、そのようなイメージは相方である岩尾さんの方が強く*4、後藤さんはそれを注意したり、からかったりしているイメージがある。

それが、どうだろう、十年ほど前には、先輩にも相方にも「暗い」ことを認められている。

このラジオでは、ようやく東京にでてきたことや、その引っ越しについて話している。ということは、ちょうど小藪さんの言う「東京にきてから」の直前と言えよう。

もしかして、この「暗い」頃の後藤さんが、小藪さんの言う「ちゃんとした目」の後藤さんなのだろうか。

そうだとしたら、なんで後藤さんは「ちゃんとした目」の自分を完全に捨てて、「いつ何時も芸人モード」の自分でいることを選んだのだろう。

何よりも疑問だったのは、もともと「暗い」人だったはずの後藤さんに、今、その影が全く見えないことだった。

本当に「暗い」人だったなら、なんで今の後藤さんのプライベートでそういう話を聞かないんだろう。収録中や仕事中のみ、明るい人を演じているというのならわかる。事実、そういう人の話はよくテレビで暴露されている。けれど、後藤さんは、プライベートが暗いなんて話、聞いたことがない(私が不勉強なだけかもしれないが)。むしろ、先輩芸人と飲みに行ったり、後輩を連れてアクティブに旅行に出かけたりしている印象が強い。それが嘘だとは思えないけれど、「暗い」人だった後藤さんとはどうにも結びつかない。

 

ということで、悶々と悩んでいた私に答えを与えてくれたのは、チュートリアルの徳井さんだった。徳井さんと後藤さんは、「徳井と後藤と芳しの指原が今夜くらべてみました」(火曜23:59~24:54/日テレ系)で共演しており、過去にはドリームマッチで漫才をしたこともある、ほぼ同期、といった関係だ。

以下は、脚本家の大宮エリーさんがustreamで配信している「スナックエリー」という番組に徳井さんがゲストとして出演した回*5の抜粋である。なお、編集の都合上、相槌や脱線した話など不要な部分は省いてある。

 

徳井 フットボールアワーっていま、後藤がツッコミで岩尾がボケやねんけど、もともとあいつ、別のやつと組んでて、もともとボケやねん。

そのコンビがあかんなあってなって、で、岩尾と組むってなったときに、後藤がツッコミになったんやけど、そっから……ツッコミって努力やねんな。

まぁ努力せなツッコミって……やっぱ上手くなんのはツッコミの人やねん。ボケの人はもともと持ってるもんで、ずっと行くけど。大体。後藤は…持ってるもんも、もちろん持ってるし、でもやっぱ、努力の人やな、あれは。

 

徳井 ツッコミとしての自分のスタンス作りというか、周りの人との人間関係の中でのスタンス作りとか。なんか誰かがなんやいうたら、その話を広げるのか、最終的にツッコむのか、まとめて返すのか、みたいなことを、日々努力してはんねん、やっぱ仕事場だけやなくて。

エリー へぇ〜。人間関係作りって、環境作りって、ツッコめる環境を作っとくの?

徳井 やっぱり……無茶苦茶マニアックな話やけど、ま、それはボケの人はボケの人であんねんけど、ツッコミの人やったら、漫才のネタの中でなんぼ「なんでやねん!」とかって言うてても、普段、が、ツッコミじゃなかったりすると、とか、普段がすごいど天然だったりすると、普段イジられるやん。んなら、普段イジられでる人が、いざ、逆に現場ではこいつ、ツッコんだりとか、なんか仕切ろうとしてきてるみたいになったときに、普段この人をみてるこの人(別の人)はすごい違和感があるねん。やっぱりツッコミの人で、仕切ろうと思ったら、普段から、ちゃんとしっかりしている人やないとあかんし。

やっぱりイジられ放題の人では、あかんねん。

そこをもし、もともとのその人がイジられるような人でも、ツッコミとしてちゃんとやろうと思ったら、普段からそうせなあかんねん。

でもそれって、すごく疲れるし、でもやっぱり、仕切ってツッコんで、ってちゃんとやってる人は、それやってる、普段から。

エリー もともとそういう人がなるんちゃうの?

徳井 もともとそういう人ってのもいるけど。うん。でもそれはやっぱり努力が必要や。テレビ以外での下地作りっていうのが。

だからそれってすごい労力かかるし、大変なことやと思うけど。だからやっぱり後藤はすごいねん。

と、まぁこういうことなのだ。これで私が見つけた答えのすべては説明がついているし、私がとやかく言うよりこれを読んでいただいた方がわかりやすいと思うのだが、とりあえず、私なりの考えを付け加えておく。

 

フットボールアワーはネタが評価されて、数々の賞レースを勝ち進み、2003年M-1グランプリで優勝を勝ち取るが、それ以降、「周りが引くほど」*6鳴かず飛ばずの毎日を送ることになる。今では笑い話となった、後藤さんが一人で青森のねぶた祭りの事前番組に出かけたのもこの時期で、岩尾さんのハゲ・ブスキャラだけではどうにもならないもどかしさを抱えていたことだろう。

そこで、どのような心境の変化があったのかはわからない。だが、「暗い」人だった後藤さんが、東京の芸人さんと新たに人間関係を築くことが必要だと考え、それを実践した。そのことに、たくさんのエネルギーが必要だったことは想像に難くない。そこまでして、人間関係を築いたとて、それはあくまで土台であり、それだけで売れるとは限らない。骨折り損のくたびれ儲けとなる可能性だって十分にあった。

しかし、それでも後藤さんは、「暗い」人であることを辞めた。そして、小藪さんの言うところの「タレントの目」を入れ込んだ。

これが意味することは、後藤さんが、「岩尾さんだけ」を対象とした漫才のツッコミだけではなく、「演者全員」を視野にいれた司会者のツッコミを手に入れようとし始めたということだ。

そうでなければ、徳井さんの言う、「周りの人との環境の中でのスタンス作り」は必要ない。「暗い」人であっても、何ら問題はない。

つまり、漫才師としてだけでなく、お笑いタレントとして、テレビに出続けるために、人間関係作りが必要だと判断し、そして、そのために「暗い」後藤輝基であることを辞め、今のようなスタンスへと舵をきったのではないだろうか。

 

それから、五年ほどだろうか、深夜番組などで、徐々に力をつけた後藤さんは、2011年、大ブレイクを果たし、「次世代No.1MC」なんて称号までもらってしまった。

つまり、「周りの人との環境の中でのスタンス作り」をコツコツと重ねていった結果、司会者としての地位を確立し、お笑いタレントとして成功することができたのだ。

徳井さんは、上で引用した番組の中で、「あいつ(後藤)はやっぱ腕あるから」「周りの芸人も言うし、視聴者の人も面白いなって言うし、スタッフも認めるし」とも述べている。それはきっと、周りの芸人さんや、スタッフさんとの人間関係の中でも、しっかりした人としてやっているから、誰にも違和感を与えずに、“面白い”“腕がある”司会者だと思わせることができるのではないか。

その代償として、小藪さんの言う「ちゃんとした目」を失った。だから、目ざとい人には、それがバレてしまうのかもしれない。

 

もちろん、今の後藤さんが無理してしっかりした人間を演じ、司会者になろうとしている、なんてことを言うつもりはない。

今の後藤さんがもし、「ちゃんとした目」をしてなかったとしても、「タレントの目」が自然体となってしまっているなら、きっと無理をしているわけではない。

つまり、「ちゃんとした目」を辞めて「タレントの目」を手に入れるのには、確かにたくさんの労力が必要だっただろう。そして、この文章ではその過程に焦点をあてた。けれど、だからといって、今も「タレントの目」をもって生きることに苦労しているとは限らない。

 

この文章が、後藤さんのキャラクターを損なう目的で書かれたわけではないことは、どうか理解してほしい。

ただ、私は、フットボールアワー後藤輝基という人が、どういう人なのか、知りたかっただけだ。だから、ここに書いたことは全部仮説だ。参考文献が(話を盛るだろう)芸人さんのラジオやテレビなど合わせて四つしかない、心もとないレポート(?)だ。

これが真実だとは思わないでほしい。この文章は、フットボールアワーに詳しいわけでも、お笑い好きでもなかった私が、ただ単に疑問に思ったことを調べ、その答えの一可能性を示しただけのものだ。

 

 

 

スズキアイコ/無断転載禁止

2016年5月8日

 

*1:テレビ東京/2012年3月18日放送

*2:2005年2月16日放送/TBSラジオなど

*3:後藤さんの前コンビ名

*4:「人見知り強い」in「ざっくりハイタッチ(旧・ざっくりハイボール)」など

*5:2012年10月24日配信

*6:M-1グランプリ復活記念 王者達の緊急サミット」 テレビ朝日系/2015年11月29日放送